「高血圧の症状と漢方薬」
高血圧は主に生活習慣病です。なってしまったら薬を飲めばいいやでは必ずしも改善するとは限りません。食生活、運動を見直さなければ本当の意味での改善には至らないでしょう。基礎疾患(心臓病・脳血管疾患)をお持ちの方は西洋医学のお薬に加えて体質改善を積極的に進めるとより安心できます。
高血圧の中医学的考え方
漢方治療では、高血圧をもたらす体質を変えていくことがポイントです。血液の流れをサラサラにする、血液中のコレステロールや中性脂肪をとる、むくみやすい人は水分代謝を改善する、ストレスによる自律神経の乱れを改善する、女性ホルモン失調の改善など、タイプによって漢方薬を選択します。遺伝的要素のある人は、心臓病や脳血管障害の予防が大切です。
高血圧の漢方処方例
大柴胡湯 釣藤散 黄連解毒湯 冠元顆粒 心沙棘
※体質により漢方薬は異なりますので、ご相談ください。
高血圧のケーススタディ
春は血圧が乱高下する季節
WHO(世界保健機構)と国際高血圧学会による高血圧の診断基準は、140/90以上を高血圧としています。血圧は個人差があり一概には言えませんが、新しい基準では日本人4人に1人は高血圧であるといわれます。
高血圧の初めは自覚症状が殆ど無く、ふらつきや軽い眩暈を感じる程度で「疲れたのかな」位で済ませてしまう人が多いものです。しかし高血圧が続くと、知らない間に脳卒中や心不全・腎不全など恐ろしい病気が待ち構えています。重大な病気に至らしめることからサイレントキラー(静かなる殺し屋)とも呼ばれています。
50歳のAさん、更年期も重なり、175/95としっかりした高血圧で来店されました。赤ら顔で頭痛を伴い便秘気味です。イライラ・肩こりもあります。食事のことを聞くと濃い味が好きで、お肉大好き。魚は嫌い。睡眠も5~6時間しか取れていない。生活習慣を見直さなくてはいけないタイプです。
まず塩分と脂肪分を極力控え、魚や野菜を増やし、睡眠をよくとることを約束し、改善に努めてもらいました。また漢方薬は逍遥丸と三黄丸を飲んでもらいました。1ヶ月後自覚症状は殆ど取れ、血圧も150~140/90~85くらいまで下がってきました。
高血圧の漢方治療は、血流や肥満を改善したり、のぼせの体質を治すことにより血圧が正常になる場合が多く、降圧剤とは作用が異なります。時には降圧剤が必要なこともありますが、漢方薬との併用によって重大な病気の併発を予防することができます。春は血圧が乱高下する時、一度測ってみられてはいかがでしょうか。
食生活とストレス
谷にこだまするウグイスの声を聞きながら山菜を摘む楽しい季節となりました。この時期は自然界すべてのものが伸びやかに成長を始める時期で、人体の機能も活発化してきます。
春は高血圧の人は特に要注意です。それは、外部の陽気とともに体内に陽気が上部に(顔、頭)に昇り、目眩、頭痛、耳鳴り、イライラといった高血圧に伴う症状が強くなるからです。
現代医学の高血圧治療は血圧を下げる降圧剤が中心ですが、長期服用すると副作用が気になってきます。これに対して漢方医学は、血圧計が出てくる以前に治療法が確立しており、高血圧という概念はありません。すなわち血圧を下げることを第一目標とせず、心身全体の調和を整えることによって、結果として降圧効果を得たり、随伴症状を解消するという考え方です。
高血圧は、ストレスや外部の刺激などを受けやすい「肝」タイプ、中年以降の多い加齢で体力が消耗することによる「腎」タイプ、末梢血管収縮などの血液循環不良による「お血」タイプに分類して考えます。
代表的な漢方薬としては、竜胆瀉肝湯、六味丸や冠元顆粒などを用いていますが、一人一人の症状を分析し、その人に合った処方を決めることが大切です。また、薬による治療だけでなく、塩分や油濃いものの制限など、食生活上の注意が大切であり、さらにストレスを上手に解消することが重要なポイントとなります。
※その他にもたくさんのケーススタディがありますので、ブログ内で検索してみてください。