「原因と漢方対処法」

免疫性不妊

抗リン脂質抗体陽性

自己免疫疾患の一種で、抗体により前身の血液が固まりやすくなり血栓ができてしまいます。原因はまだわかっていません。不妊の原因としては、胎盤の血管が詰り胎児に血液が供給されなくなり流産につながります。習慣性流産の10~16%が抗リン脂質抗体と言われます。

免疫性不妊
免疫とは、元々は身体の中に入った病原菌などの異物から身体を守るためのメカニズムで、病原菌を排除するのに重要な役割を演じています。しかし、時として異物として認識しない物質に対しても間違って抗体をつくってしまうことがあります。これら色々な抗体が関ってしまっている不妊を「免疫性不妊」と言い不妊患者の5~10%にも及んでいます。

漢方的には全身的に症状をとらえて弁証し、免疫調整の漢方薬をベースにして身体つくりをし、着床前、妊娠後と、きめ細かに処方していきます。「補気活血」が中心になります。抗リン脂質抗体陽性の方は結構多く、西洋薬との併用で無事妊娠されています。
・・・詳しい処方については、相談票フォームからお問い合わせください。

妊娠してもすぐに流産してしまう不育症

34歳のRさんは、身長147㎝で38㎏と小柄。結婚して12年になります。これまでに2回流産をしましたが、いずれも6週目の初期流産でした。流産の原因は「抗リン脂質抗体で血栓ができて、赤ちゃんに血液が巡らないため」。さらにリウマチなどに関係する抗核抗体も陽性です。プロラクチンも25と数値が高め。Rさんは自然妊娠はしてもすぐ流産してしまう不育症です。月経周期は28~30日で、月経期間は7日間、月経血には血塊が混じります。寒がりで冷え性、腰痛もあり、疲れやすく風邪もひきやすいようです。うつ傾向に陥りやすく、月経前症候群(PMS)もあります。排卵期のオリモノは少ないようです。月経周期14日目の卵胞は7・2㎜、内膜は15㎜で、卵胞の成長が遅れ気味です。すぐに周期療法を開始。全周期を婦宝当帰膠と衛益顆粒、イーパオを使い、月経期は血府ぷ逐丸、シベリア霊芝、卵胞期はシベリア霊芝と杞菊地黄丸、高温期には参茸補血丸と帰脾錠を服用してもらいました。

1ヵ月服用後には、13日目の卵胞の大きさは18㎜に成長しました。わずかな出血に「もう生理かな?」と冠元顆粒を飲み始めましたが、翌朝も体温が下がらず「もしや?」と思い、妊娠検査薬で調べると陽性反応が出てびっくり。双子の妊娠でした。流産の経験が2回あるので、即入院となり止血剤と黄体ホルモンの注射、そしてバッファリンの内服が始まりました。入院中も漢方薬の衛益顆粒とシベリア霊芝、婦宝当帰膠を免疫性不育症の対処として、流産止め安胎薬として続けてもらいました。頑固な便秘症でしたが、紅サージが効きました。どんどん大きくなっていく双子の赤ちゃん。12週目に子宮頚管縫術が行われ、アスピリンやヘパリンの力を借りながら漢方薬を飲み続けていました。32週目に出血、帝王切開で2人の女児を無事出産しました。

結婚して12年目。待望の赤ちゃんは1528g と1320g の低出生体重児で新生児集中対処室(NICU)へ入院となりましたが、毎日搾った母乳を持って面会に行く楽しみもわが子が待っていればこそ乗り切れました。2ヵ月後、赤ちゃんたちは4000g になり毎日悲鳴をあげる忙しさに明け暮れているようです。平和な世の中で育ってほしいと願っています。

「抗リン脂質抗体」という免疫性流産により流産を2回経験されていたRさん。せっかく赤ちゃんが出来ても育ちません。すなわち「不育症」の範疇です。漢方的には「脾虚」「陰陽両虚」「血虚」「お血」と捉えられます。周期療法を用い消化機能を補いながら、腎の強化を図り免疫力を調整した対処法をすすめました。妊娠中はヘパリンとの併用でしたが、安胎、養胎薬として漢方が流産防止に役立ったと思います。小柄な身体で双子のかわいい赤ちゃんを授かり幸せいっぱいのRさんが輝いています。