多汗症

「多汗症の症状と漢方薬」

多汗症について

多汗症の原因は様々で、精神的なもの、食生活、肥満によるもの、遺伝性、、ホルモンバランスなどがあります。
また、発汗の部位も、全身性多汗症と、頭部、顔面、手足、腋などの局所性多汗症があります。

漢方では、その原因を探り、また部位を考え、さらに体質を総合的に判断して漢方薬を選定します。
体表の汗腺をコントロールする力を高めたり、水分代謝を良くして汗を少なくする、自律神経のバランスを整えるなど、多くの処方があります。

多汗症の種類とそれぞれの中医学的対処法

精神性の多汗

緊張によって急激に発汗するケース。 緊張を緩和するため、いつも気分を安定させるような安神作用のあるものを用います

漢方処方例

柴胡加竜骨牡蛎湯  柴胡桂枝乾姜湯 など

食生活による多汗

香辛料や脂質を多く摂ることで余分な熱を産生するケース。 胃腸の熱を冷ますものを用い、また食生活の改善をお話します。

漢方処方例

黄連解毒湯  茵陳蒿湯 など

肥満による多汗

肥満によって、水分や身体の熱がオーバーしているケース。 肥満解消や水分代謝の改善の漢方を用います。

漢方処方例

防已黄耆湯  防風通聖散 など

ホルモンバランスの乱れによる多汗

更年期などに見られる、のぼせやホットフラッシュなどで発汗するケース。 ホルモンの安定、影響を緩和するものを用います。

漢方処方例

加味逍遥散  女神散 など

遺伝による多汗

小児からの症状で、遺伝性と考えられる場合は改善は難しいです。

代償性発汗の場合

主に緊張性発汗によって手掌発汗が酷い場合にETS(胸部交感神経遮断)術が行われますが、その数%の方に代償性発汗が見られます。
発汗部位は、背中や下半身に多く見られ、発汗量も多く感じられるようです。
この発汗は温熱性発汗ですが、ETSを受けていない方の温熱性発汗とは異なり、改善は難しくなります。

  • 水分の代謝を促進する
  • 汗腺の働きを高める
  • 身体の熱を軽減する

などを用います。

漢方処方例

五苓散  衛益顆粒  瀉火利湿顆粒  黄連解毒湯など

発汗部位から考える場合

  • 頭部:のぼせによるケースが多いです
  • 腋:ストレスが関連するケースが多いです
  • 手足:ほてりによるものと、緊張性の方に見られます
  • 全身:水分代謝が良くない方に見られます。

その他、体質や生活環境によっても影響している場合がありますので、ご相談ください。

case study

飲みやすい漢方薬、衛益顆粒

夏になると「汗かき」の相談が多くなります。暑いので当然というレベルでなく、流れるように出るケースです。
28歳のAさん。毎日パソコンを使って図面作成をしておられますが、手や顔から出る汗の量が多く、仕事に支障をきたすと来店されました。Aさんには固表、止汗作用のある衛益顆粒を飲んでいただきました。20日ほど経って、汗の出方が減り、2ヶ月過ぎた頃には、気にせず仕事ができるようになった、と感謝の言葉を頂きました。
Aさんのように、普段は汗をかかないような状況でも汗を多くかく傾向の人を「多汗症」といいます。全身にかく人は全身性多汗症といい、神経質で精神的興奮を起こしやすい人、貧血、脳溢血の方に起こりやすいのです。手掌や足裏、腋下、顔、腰だけに強く汗をかくときは、局所性多汗症といいます。
漢方では、汗がだらだら出てしまう多汗症は、体表を防衛する力(皮膚温度調節や、免疫)が弱いと考えます。また汗は津液(体にとって有用な水分)の一部であり、体の隅々を潤し、滋養作用をもっている大切なものです。その津液が汗として出てしまうのは、衛気(体表防衛力)が発汗を調節できなくなってしまった結果です。
この時に用いられる生薬は黄耆というマメ科の植物で、朝鮮人参と同じように元気を補う代表的なものです。この黄耆を主成分とする薬に「玉屏風散」があり、製品名【衛益顆粒】という飲みやすい漢方薬があります。この夏に是非試してみられては?

多汗症に対応する漢方薬

急に暑くなり、今日は5月下旬の気候とか・・・。
暑くなるとともに、多汗症のご相談が増えています。もともと多汗症や異常発汗は夏だけの問題でなく、1年を通してお困りなのですが、夏は特に酷くなるため、つらい思いや恥ずかしい思いをされるようです。
多汗症にはいくつかのケースがあります。手足のひらに多い、頭や脇に多い、頭だけ汗が流れる、緊張によって発汗するなどです。
対応する漢方薬も多く、

  • 衛益顆粒・・・表虚といい、皮膚が弱く、汗をコントロールできない方に
  • 柴胡加竜骨牡蠣湯・・・緊張すると酷くなる方に、神経の安定をはかります
  • 瀉火利湿顆粒・・・のぼせやイライラがあり、赤ら顔の方に
  • 平胃散・・・脂濃い食事で、湿と熱が身体に多い
  • 黄連解毒湯・・イライラしやすく、熱がこもっている

などたくさんあります。
体質と症状によってこれらを組み合わせていきます。少し長期になる可能性もありますが、まずはご相談ください。

幼少からの多汗

24歳のYさんは、幼少の頃から多汗に悩まされているようです。
顔、脇、手のひら、そして足の裏までよく汗をかくようです。
夏場は特にひどいようですが、湿気の多いときや緊張時によくかくとのことです。寝汗もかくようです。
麦味参顆粒 手足はほてることが多く、汗をかいた後は逆に冷えを感じるようです。手の指や足が夜間むくんでいることも多いようです。
食欲はありますが、水分もよく摂るため、お腹がちゃぽちゃぽと音を立てることがあるようです。 お腹を下すことはあまりなく、どちらかと言えば便秘がちのようです。
多汗の原因は人それぞれであり対応の仕方も異なります。
しかし、汗をかくこと自体は生理現象であり、体は必要に応じて汗をかきます。
ただ、必要以上に汗をかくことは煩わしいことであり、また、汗をかくことで体の「水」や「気」を失い、そのことが様々な疾病の引き金にもなり得えますので、きちんと対応しておく必要があります。
この方の場合、「肝鬱」、「脾虚水滞」、「陰虚」の状態があったため、防已黄耆湯や加味逍遥散、桂枝加竜骨牡蛎湯などを一ヶ月ほど服用して頂きました。
寝汗や便通はよくなったものの汗の状態はあまり変化が見られなく、疲れやすいとのことでしたので、今度は衛益顆粒と麦味参顆粒を併用して頂きました。
すると顔の汗はまだかきますが、手のひらの汗がなくなり、さらっとするようになったようです。また、指や足のむくみが取れました。
衛益顆粒の主薬である黄耆は体の表面上の気である"衛気"を強め、汗の出を調節します。 麦味参顆粒は人参、麦門冬、五味子の三つの生薬からなり、人参で体の元気をつけ、麦門冬で失った水分を補い、五味子の収斂作用で汗の出を調節します。