下痢・軟便
「下痢・軟便の症状と漢方薬」
目次
下痢・軟便について
下痢は、大腸の水分吸収に問題がある場合や、腸粘膜の分泌異常亢進が原因となっている場合があります。
◆急性の下痢の場合
急性の下痢には、細菌やウイルスによる感染症や食中毒など食事に関連するもの、冷えや神経性のものがあります。
感染症や食中毒などの場合は、便が毒素を排出する重要な経路になることもありますので、あえて下痢を止めずに対応した方が良い場合もあります。
◆慢性の下痢の場合
これに対して、慢性の下痢は、潰瘍性大腸炎などの炎症性のものや消化不良、内分泌疾患など、内因性のものが多く見られます。
この場合は、身体の内部の炎症や臓器の働きの不足など、そもそも下痢を起こしている原因に対処していく必要があります。
漢方では、主に慢性の下痢に、その成因と実際の症状によって対応します。

下痢・軟便の原因と中医学的対処法
外的要因によるもの
冷え、多湿、暑気、細菌性
内的要因によるもの
五更泄瀉(夜明け前に腸鳴して、すぐ下す)
飲食の不摂生によるもの
暴飲暴食、夜遅くの飲食、冷たいものの過飲・過食
精神的要素によるもの
ストレス、過緊張、下痢と便秘を繰り返す(過敏性腸症候群)
脾胃虚弱によるもの
慢性的な下痢・軟便
痛みを伴うもの
急激な冷え
下痢・軟便のケーススタディ
季節の変り目の下痢・軟便
季節の変わり目で、朝夕が冷えるため胃腸の調子が崩れ、下痢や軟便になるかたがあります。7年前にお越しいただいていたTさん、毎年この時期になるとおなかの調子が崩れるため電話をいただきます。
以前は<半夏瀉心湯>や<勝湿顆粒>など、状況に応じて使っていただきましたが、今回は元々胃弱なことも考え合わせ、<健脾散>をお使いいただきました。この薬はおなかを温め、胃腸の力をつけ、生薬の<蓮肉>に止瀉効果がありますので、慢性的な軟便傾向の方にはよく使います。
ながいお付き合いで、年に1回でも電話をいただけるのはうれしいものです。
過敏性腸症候群
デリケートな感じで、下半身が冷えやすいとのことでしたので<桂枝加芍薬湯>と<人参湯>をお使いいただきました。2週間でお腹の状態は落ち着いてきて、気分も良いとのことでしたが、冷えがまだあるので<婦宝当帰膠>を併用いただきました。
就職や進学の時期となりました。
新しい環境になると、ストレスによって慢性的な下痢を発症する方がふえてきます。特に脂ものや牛肉、香辛料などで下痢症状はひどくなり、食べ物に対して神経質になる方もあります。
26歳女性Kさん、10年前に過敏性腸症候群と診断を受けたことがあり、その後小康状態を保っていましたが、3年前の就職をきっかけに再発し、常時軟便で、食べ物や冷えが伴ったときには下痢になることが増えました。そのこと自体がまたストレスになり、困って相談に来られました。
2ヵ月後、下痢はすっかりなくなり、冷えも改善して調子も良くなり、最初来られたときとは違ってとても表情が明るくなりました。
気分が良くなると、身体もますます良くなることと思われます。