子供の花粉症

すっかり春めいて、さくら情報が聞かれるようになりました。京都の御所も既に開花し始め、今週が見ごろです。

花粉症も本格的になりご相談もふえています。特に子供の花粉症には西洋薬が使えず対応に苦慮されていますが、こんなときこそ漢方の出番です。とは言うものの、粉薬が苦くて飲めないとか、錠剤が大きすぎて飲めないとかいった問題もあります。しかし、小さな子供さんが目をこすって真っ赤にしているのを見ると、ジュースに混ぜても、何でも良いからとにかく使ってみて!と言っています。

子供さんが使いやすい花粉症の漢方薬は、鼻水が多い方には、少し小粒の錠剤の<小青竜湯>や、鼻閉の時の<鼻淵丸>は丸く小さいので問題ありませんが、それでもダメな場合は割って使うなど工夫が必要です。

生薬を上手に使う

日本では昔から、<どくだみ(ジュウヤク)>や<ゲンノショウコ>、<めぐすりの木>、<ガイヨウ>などは民間薬として使われています。
また漢方薬としては生薬を合わせて処方された<煎じ薬>が使われてきました。

中国では、歴史の違いもあり、医療機関が少なかったため、生薬を自分で選んで煎じて飲むというのが日常的に行われているようです。中国へ行くとあちこちに<生薬市場>があり、また食品市場の中にも生薬を売る店があります。

そして、日本に住んでおられる中国出身の方は、当店のような専門店に生薬を指定して買いに来られます。例えば、冷えや頻尿の時に<補骨脂>を、咳や口の渇きに<麦門冬>、また汗が多く出るときは<五味子>などです。最近は衛星放送で中国の番組が見られますので、それで得た漢方情報を参考にされているようです。

生薬が日常生活にしっかり入りこんでいるのは、医療不足の歴史によるものと思われますが、『人に頼らずわが身を守ること』が大切なことを教えてくれます。

赤ら顔

赤ら顔の相談も多いのですが、改善に時間がかかるケースや、また改善しないケースもあり、難しいと感じています。主なタイプで分けますと

1、いつも赤い

2、緊張するとすぐ赤くなり汗が吹き出る

3、のぼせで赤くなる

4、季節の変わり目、特に春先に赤くなる

5、肝臓や血圧の影響で赤くなる

など、様々な原因があります。

漢方薬も、熱を冷ますものから、血流を良くし熱を発散させるもの、過緊張を抑制するものなど様々です。このうち難しいのは1、2、で、3と4は比較的短期間で改善します。

先日相談に来られた40歳の女性、春や秋の季節の変わり目に顔全体が赤くなり、特に目の周りが赤く腫れて乾燥し、酷いときは皮膚が剥落するようになるとのことでした。肌全体も乾燥気味で、アレルギー体質もあり、季節の影響を受けているのは明らかでした。

そこで、乾燥をとる<当帰飲子>と、目の周りの炎症を鎮める<梔子柏皮湯>をお使いいただきました。

2週間後来店いただき、赤みはほとんど消え、痒みもなくなりました。予想以上に短期間での改善で喜んでいただきました。

漢方で<春は肝の病を生じやすい>と考えます。そのため、肝の影響を受けやすい目の周りに症状が強く出たり、自律神経のトラブルが出やすいのです。西洋医学ではあまり季節を重視しませんが、漢方(正確には中医学の五行説)では、季節や自然の変化と人体が受ける影響をいつも考えているのです。

こわい夢

怖い夢を見て目が覚めるという話を以前に書いたかもしれませんが・・・改めて書きます。

強いストレスを受けたときや、過去にストレスが継続していたときに、その記憶が残っていて夢に出てくるという事はよくあることです。しかし、その程度が強い場合、睡眠中に唸ったり、無意識のうちに腕を振ったり、起き上がったりすることもあります。

通常は睡眠中は副交感神経が優位なのですが、この場合は交感神経の興奮状態になっているようで、朝目覚めたときも「寝た気がしない」ので、身体も疲れが残ります。

63歳男性、現在は退職されてストレスも感じないのですが、昔働いていたときのストレスがかなり強かったためか、睡眠中に上記のような症状がでるため相談にこられました。

1月下旬に来られたときに痰湿タイプの体質改善と安神作用の<温胆湯>と肝気の興奮を抑制する<抑肝散>をお使いいただいたところ、1週間で少し改善し次の2週間ですっかり症状はとれました。その後漢方薬の服用を1日1回にして継続されていますが、全く起こる様子もなく完治したようです。

西洋医学ではこのような場合、睡眠剤系が使われると思いますが、漢方はこのような「変わった症状」に適するものはたくさんあるところが漢方の特徴でしょうか。

舌炎の痛み 2

先日舌炎の男性の話を書きましたが

同日に舌の辺縁部が痛むという女性が相談に来られていました。

43歳女性、会社員の方、1年ほど前から痛くなり始め、医院で抗生物質をもらっていましたが、痛みは改善せず困っておられました。状態は、舌の辺縁部に赤みはなく、炎症が明らかでなかったのですが、痛みがあるとのことでした。

比較的色白で、冷え性、少しヤセ気味の方で、発症した時期は忙しく、ストレスも多かったとのこと。中医学では「気血両虚」のタイプで、補血を中心に考えようと思ったのですが、疎肝を優先し、血の道症に使う<逍遥丸>をお使いいただきました。

そして2週間過ぎた今日来店され、かなり楽になってきたとのことでした。今回は粘膜の修復作用を目的にオウギ製剤を加えました。1年間抗生物質を使って、胃腸も負担になっていると思われますので、胃の調子も整える必要があります。

飛蚊症の漢方

漢方薬は目のトラブルにもよく使います。中でも多いのが白内障、緑内障ですが、その他に飛蚊症、閃輝暗点症などにも効果があります。

今日お問い合わせのあった方は33歳の男性で、飛蚊症があり、眼科では治らないといわれ、不安になったとのことでした。話をお聞きすると、漢方的な捉え方による原因がはっきりしていて、まだ若い方ですので、改善の見込みは充分ある旨をお伝えしました。

実は、私も飛蚊症があり、パソコンと1日中格闘した時や、疲れが激しいと出てきます。休養して治まる場合はよいのですが、なかなか消えないときは<杞菊地黄丸>を使いますと改善します。

これは中医学で<肝腎両虚>といい、エネルギー低下状態になっていることが原因なのです。飛蚊症の中医学的区分は、これ以外にも<気血両虚=元気不足と血液不足>や<痰濁><湿熱>などがあり、体質判断により漢方薬は変わります。そして、若い方は早く改善し、高齢者ほど時間がかかるように思います。

舌炎の痛み

口内炎のように舌が炎症を起こし、痛みや潰瘍状になることがあります。

中医学では、胃熱(食べ過ぎなどで胃がオーバーヒートしている)、陰虚(身体の水分代謝が異常)、心火(ストレスなどでのぼせ気味の状態)などを原因とすることが多く、体質も考慮して漢方薬を選びます。

短期の口内炎は治療しなくても改善しますが、慢性的な炎症や潰瘍は漢方が得意な分野です。

55歳男性Bさん、舌が歯にこすれるためか、舌の辺縁部が潰瘍状になって痛く、話しにくく、その後は咽も痛くなり相談にこられました。

口腔部全体に炎症があり、話すたびに舌が歯に触れて痛く、食事も辛いようでした。早速、炎症を鎮めるための清熱解毒作用がある喉の痛みの薬<銀翹散> と 粘膜の改善のためにオウギ製剤を使っていただきました。1週間後来店され、痛みはかなり改善し楽になったとのことで、そのまま継続服用していただいています。

舌炎の場合も、発症の原因となったこと、例えば食生活やストレスなどの改善も合わせてしていただくようにアドバイスしています。すべての病は、生活の中に原因やその病になった引き金があるので、それを本人に気づいていただき、改めていくことが症状改善の近道なのです。

しゃっくりには漢方が一番

外科や重い精神疾患になどには西洋医学のほうが優位ですが、耳鳴りやしゃっくり、体質改善などは漢方が得意とする分野です。

しゃっくりも時々起こるものは病的ではありませんが、連続してとまらないしゃっくりは食事もできず大変です。しゃっくりの相談に来られる方のほとんどが入院しておられるか、重い疾患を持っておられる方で、その原因は胃の冷えや水毒、気の上逆(ストレス)によるものです。

民間薬としては昔から柿のへた(生薬名:柿蒂)を煎じて飲む方法が知られていますが、漢方ではこの<柿蒂湯>以外にも<芍薬甘草湯>や<呉茱萸湯>などの処方があります。いずれも胃を温め、気の上逆をとるなどの作用によるものです。

子供のしゃっくりは冷たいものを飲んだときに起こることがありますが、これは熱い砂糖湯でも改善します。

66歳Nさん、肝ガンで入院中にしゃっくりが始まり、止まらないため、担当医師から漢方を探してみてくださいとのアドバイスを受けて、当店に来られました。

詳しく聞くと、ガンによって腹水がたまり、気分的にも落ち込んでいるとのこと。最初は柿のヘタを希望されていましたが、<柿蒂湯>の煎じ薬をお使いいただきました。

結果、2日後にはかなり楽になり、3日後にはしゃっくりは止まりました。その後腹水の改善のため、他の煎じ薬を使っていただきました。なお、肝臓病の方はしゃっくりが出やすいのも特徴です。

しゃっくりを改善する処方はいくつかありますが、早い場合は1日でとまります。これは西洋医学では対応できない、漢方が得意とする分野です。

慢性鼻炎の改善

花粉症の時期になりオウギ製剤を頻用していますが、慢性鼻炎の方に長い間使っていただき、期待以外の効果がでたので紹介します。

この方は関東にお住まいの45歳のMさん、京都に住んでおられるお父さんの紹介で、慢性鼻炎に使う薬として<オウギ製剤>を送ることになりました。

毎日点鼻薬を使い、抗アレルギー剤を併用しておられたのですが、その後症状は改善し、点鼻薬が不要になりました。

それ以上に驚いたのは、子供の頃から白血球が少なく、風邪をひきやすい体質だったのですが、漢方薬Eを飲みだしてから半年後、白血球が正常範囲を保つようになり、合わせて風邪をひかなくなりました。

それもあって鼻炎はますます良くなり、もう漢方薬も要らないほどになったとして、大変喜んでいただきました。その後も免疫維持のために、1日1包だけ継続してもらっていますが、それでも体調は良好で、血液検査もすべて正常になっているとのことです。

生薬オウギは外部からの風邪(ふうじゃ)を防ぐという作用があり、様々なことに使われます。

かすれ声

乾燥や花粉によるアレルギーで咽が炎症を起こし、声がかすれ、出にくくなる方があります。

咽をよく使う方に多く、以前にも書きましたが、謡曲や歌を趣味にしている方、セールストークをされている方、講演をする方、そしてお坊さんです。

50歳の女性Yさん、セールスの仕事をされていて時々声が出にくくなるとのことで来店されました。前回は補陰作用の<麦味参>を使っていただき改善しましたが、散剤は飲みにくいとのことで、今回は錠剤の<麦門冬湯>をおすすめしました。

謡曲をしておられる女性は、<麦門冬湯>を飲んでいるときは声の通りがよくなるということです。趣味でカラオケをしている男性も、使っていただいています。

いずれも生薬:麦門冬の滋陰・補肺による、乾燥の改善と呼吸器の強化作用によるものです。