なにもないのにイライラ感

ちょっとしたことでもイライラする方はありますが、思い当たる原因が何もないのにイライラするという方があります。

よく見られるのは更年期の症状を伴うケースです。このような場合<加味逍遥散>がよく使われますが、体質や状況によっては様々な漢方薬を使います。

49歳の女性、Iさん、わけもなくイライラし、のぼせがあるため鼻血が出るときもあるとのこと。当然<加味逍遥散>は以前からお使いいただいていましたが、あまり効果がはっきりしないとのことでした。

そこで、いわゆる陰虚による<虚火上炎>ととらえ、<滋陰降火>を基本にした<瀉火補腎丸>を使っていただきました。更年期と捉えるより、年齢とともに身体の水分のめぐりが悪くなり、身体の上と下の間で熱のバランスが崩れて、のぼせやイライラがでるケースと考えています。

肩こりとめまい

肩こりの話やめまいの話は何度も書いていますが、この2つの症状ともある方は、ほとんどが血流の悪化が原因となっているようです。

54歳の女性Tさん、血圧が高く、肩こりがひどく、時々めまいがする、睡眠時にザーという耳鳴りがするなどで相談に来られました。体格は少し小太りで、この10年間に7Kgも増えて血圧も上がってきたようです。また、めまいの状態は『フーッと気が遠くなるような感じ』とのこと。

そこでめまいの原因と思われる脳血流の悪化を改善するよう、活血作用の<冠元顆粒>と、肥満の改善をはかるため<防風通聖散>を使っていただきました。

その後1週間程度で症状は改善し、2ヶ月経過した現在は全く症状が出ないとのことでした。肩こりの方のめまいは、この方のようなケースが多いようです。

便がスッキリ出ない

便秘でも下痢でもないのですが、便がスッキリ出ず、気分がわるいという相談があります。漢方では<腹部の気滞>といい、ストレスを受けやすく神経質な方で腸の動きが悪く、便がスッキリ出ないで、何回もトイレに行くというケースです。
このような時、気滞に効く漢方薬の<通導散>を使います。

Mさんは以前から<食物繊維>をお使いいただいていましたが、Mさんのお嬢さんもスッキリ出ないとのことでしたので、ジュースのようで飲みやすく、且つおいしい食物繊維製品を送ってあげたところ、今までにないほどたくさんの便がでてスッキリし、朝1回トイレに行くとそれで済むと喜んでいただきました。

漢方薬を飲むことには少し抵抗があったようですが、食物繊維は気楽に、安心して続けられるとの報告をいただきました。

幻聴や幻覚の漢方

高齢者や認知症の方に幻聴や幻覚が見られるケースはたくさんありますが、若い方にも見られます。

31歳の男性Mさん、ずいぶん昔から、ストレスがかかったときに幻聴があり、周囲の人の声が気になるという症状がありました。見た目はすごく元気な好青年ですが、ストレスには過敏に反応し、緊張しやすいように見受けられました。

そこで平肝作用の<抑肝散>を中心にいくつかの漢方薬を続けていただきましたが、半年ほど経過した時処方を<甘麦大棗湯>に変更したところ、周囲の声が気にならなくなり、すっかり良くなりました。

個人差や生活環境の変化なども要因にはありますが、<甘麦大棗湯>はとても不思議な薬であることを実感しました。難しい病気だけに喜びも一層増します。

自然のめぐみ 3

今日は花を愛でる植物を紹介します。

<イカリ草>

雑木林の明るいところに、小さな紫色の花を咲かせているイカリ草を見つけました。

大きくなった葉を集めて乾燥したものを生薬<インヨウカク:淫羊かく>として用います。漢方では補腎壮陽、筋骨を強めるものとして使われ、また民間では滋養強壮のための薬用酒材料に用いられていて、当店も常時在庫しています。

自然のめぐみ 2

先日のワラビ収穫に続けて山中を放浪してきました。様々な草木が芽を出し、花を咲かせて植物が判別しやすくなっています。山菜として食べて楽しむものを紹介します。

【カンゾウ】

ユリ科のワスレグサ属の植物で、河川敷や湿気たところにはたくさん生えています。

カンゾウには<ヤブカンゾウ>と<ノカンゾウ>があり、どちらも食べられます。ノカンゾウはベニカンゾウとも言われ、夏には橙色の一重の花を夏に咲かせます。その頃にどこにあるか見つけておいて来年の春先に採取します。

茹でて刻んで、酢味噌あえにすると、シャキシャキしてさわやかです。なお、漢方で使う<甘草>とは全く関係ありません。

【タラの芽】

トゲのある細長い樹木の芽で、樹皮は民間薬として昔から糖尿病の方のお茶に使われています。

【コシアブラ】

ウコギ科の植物で、白い色をした樹木です。新芽はタラの芽に似ていますが、樹木にトゲはありません。天ぷらにすると香りも味も格別で、タラの芽とは一味ちがいます。なお、コシアブラと若木のウルシは樹皮がよく似ていますので、調べてから採ってくださいね。

カンゾウ
コシアブラ
タラノメ

今年もジオウの花が咲きました

春眠暁を覚えずといわれるように、春先は眠いものです。なんとなくだるくて、ボーっとするのもこの時期ですね。

そのため朝方起きられない方にお勧めしているのが<瓊玉膏>です。

滋養強壮剤となっていますが、漢方では<肺腎陰虚>に使うとされ、主成分の麦門冬や天門冬には肺の滋潤作用があり、地黄には補腎効果があります。また、人参や地黄には血糖降下作用もあり、様々な効果があわさって、身体を元気にしてくれます。

そして、今年も地黄(アカヤジオウ)の花が咲きました。

自然のめぐみ

暖かくなって山菜が芽を出し始めました。

休日は山菜採りに出かける方が多いため、私は平日の早朝に山に入り、仕事時間までに戻ってくるようにしています。最近は山菜も栽培物がありスーパーに並んでいますが、自然生えのものはアクも香りも強く、味もおいしいものです。

なおワラビには発がん性物質のタキロシドという物質が含まれていますが、その量は微量であり、水に溶けやすいので、あく抜きをすると問題はありませ ん。ワラビは油揚げと一緒に煮るのが最高!

 自然の恵みに感謝です。

先天の本と後天の本

中医学で<腎>を先天の本といい、生まれながらにして持っている生命力・エネルギーを意味します。

また、<脾胃>を後天の本といい、脾胃すなわち消化器系による消化吸収の働きによって気血が生まれ、生命が支えられているということを意味します。

そこで、心臓も肝臓ももちろん大事ですが、胃腸系はその元として最も大事なのです。

68歳の女性Mさん、風邪を引きやすいといって昨年秋に相談にこられました。話をお聞きすると胃腸が弱いとのことでしたので、風邪の予防薬ではなく、胃腸の働きを高める<香砂六君子湯>をお使いいただきました。その後今年4月までまったく風邪を引かなかったとご報告いただきました。

風邪の予防にお勧めしている健康食品も使われず、また準備されていた風邪のための漢方薬も使うことなく元気に過ごしてこられました。

後天の本、すなわち胃腸を丈夫にすれば風邪をひきにくくなるという、根本治療の大切さを学びました。

中医学研究会で勉強

今日は中医学の研究会に出席し、鬱証(うつ病)や更年期障害に関する勉強をしました。

春先は昔から木の芽時といって、気分が不安定になる時期で、この種の相談も増えます。

鬱証の進行した状態に<肝風内動>という状態があります。この意味は、身体の中の陽気の変動が、身体の動きに影響するというもので、症状としては、めまいや手足の痺れ、締め付け感、震え、ひどい場合は痙攣状態や歩行困難まで起こします。

西洋医学ではすぐに脳のMRIをとって検査する対象です。しかし、検査をしても、何も異常がない場合には漢方の出番で、陽気を鎮めて安定させる漢方薬があるのです。

医学が発達していなかった時代から、こういった症状があり、且つ解決策もあったことに歴史の奥深さを感じます。