受験生のための漢方

センター試験が終わり、本格的な受験シーズンに突入しました。

19歳男性Kさん、1浪で今年こそ!とがんばっておられるのですが、昨年夏頃からストレスによる目の疲れや頭痛、不眠などを訴えられていました。症状にあわせていくつか漢方を使ってきましたが、最後の追い込みでますます目が疲れ、目を動かすのも辛いほどになってきました。

そこで、眼の疲れを改善する<枸菊地黄丸>と、お茶として菊花のハーブティを休憩時に飲んでいただくことにしました。

菊花は中国でお茶に使われますが、枸菊地黄丸の成分の<菊花>の働きを補強するものとなります。

1年の努力が報われることを祈っています!

自律神経のトラブル

いろいろなストレスがあって自律神経に影響を及ぼすと、動悸やイライラ、肩こり、不眠など様々な症状が現れます。このとき気分を安定させる生薬の含まれるものを使いますと、様々な症状が一度に改善します。

66歳女性Tさん、ご主人が脳梗塞で半身不随になって長く、心労も多いようで、上記のような症状を訴えられていました。医院では<抑肝散>の投薬を受けておられ、飲んだときはイライラ感が治まるのですが、動悸がとれず、スッキリしないとのことでした。

そこで、この薬に加えて<救心感応丸気>をお使いいただきました。1週間分だけお渡ししたのですが、気分が楽になるとのことで再び買いにこられました。

この薬は気付け薬とされていますが、成分の<麝香>は中に詰まった気を外に出し、<沈香>は気を安定させます。その他にも<竜脳>や<羚羊角>など、気に働く生薬がたくさん含まれますので、様々な使い方ができます。

長期の膀胱炎が改善

膀胱炎は特に女性に多い疾患です。

症状は、頻尿、排尿痛、残尿感など様々で、原因も雑菌によるものや冷えにより発症するものがあります。比較的短期間で治癒しますが、長い間患っている方が漢方で改善したので報告します。

81歳女性Sさん、ほとんど寝たきりで、膀胱炎を患って検査でもいつも菌が検出され、白血球の数値も高く、炎症状態を示していました。そして抗生物質を服用されていたのですが、長期に服用していいものか心配して、ご家族の方が相談に来られました。

早速に、<竜胆瀉肝湯>をお使いいただきました。年齢的なこともあり半分の使用量でしたが、使い始めてから菌は減少していき、2ヵ月後の先日来られたときには、菌は検出されず、多かった白血球も下がり、ほぼ治癒して喜んでいただきました。ました。これで抗生物質は不要となり、胃腸の負担もなくなり、喜んでいただきました。

この漢方薬の主成分である<竜胆>には抗菌、抗炎症作用があり、湿熱タイプ(尿が黄色い、熱感がある下半身の炎症)には即効性があり、性病などにも使われる処方です。

男性の冷え症

冷え症は女性だけの悩みのように思われがちですが、実は男性にもあります。

漢方では陽虚といい、先天的な冷え体質で、持続力がなく、疲れやすいタイプの方の場合や、仕事で常時冷えるために体質的な冷えになる方などがあります。この場合使う漢方薬もたくさんありますが、代表的なものは補腎・補陽作用の<海馬補腎丸>や、冷え症に使う<当帰四逆加呉茱萸生姜湯>などですが、やはり体質によって使い分けます。

32歳男性Oさん、暖房がききにくい場所で専門的な仕事をされているため、手足など末端が冷えるとともに、冬になるとしもやけができ、蕁麻疹が出やすくなると相談にこられました。これは寒冷蕁麻疹といわれるもので、温めることで改善すると思われました。

最初は<十全大補湯>をお使いいただきましたがあまり改善せず、12月からは<当帰四逆加呉茱萸生姜湯>をお使いいただきました。その結果、昨年末からの厳しい冷え込みにもかかわらず、蕁麻疹は発症せず、例年できるしもやけもなく、手足の冷えはましになったと報告いただきました。1月も同じ薬を続けていただいています。

この薬は女性の末端冷え症によく使ってきましたが、体質が合えば女性も男性も関係ないのは当然のことです。

男性のめまい

めまいの話は何度か書いていますが、女性の症例ばかりでした。

しかし、女性に限ったことでなく男性でもめまいは時々みられます。

64歳男性Oさん、以前から尿路結石で痛みが出たときに煎じ薬をお使いになっていたのですが、11月に突然回転性のめまいが起こり、耳も聞こえにくい状態になりました。

心配で病院で検査を受けたところ耳の奥に20mm以下の腫れ物があると言われました。これが原因ではないかとの診断がおりたようですが、切り取るわけにも行かず、漢方で対応をすることになりました。

この方は以前に中耳炎になったこともあり、元々「痰湿」体質であるとともに、前回めまいが起こった時に嘔吐したらすぐ治った、という特徴がありましたので、対応方法は簡単でした。

漢方薬は<半夏白朮天麻湯>をお使いいただきました。その後全くめまいは無くなり、ふらつくことも無くなって安心されました。来月に病院で再検査しCTをとることになっていますが、腫れ物も小さくなっているのではと期待しています。

漢方・生薬の愛好家

今日あったことですが・・・お客様の中には生薬を求めてこられる方がおられます。

日本漢方では煎じ薬を作るときは原典処方を守り、時にはそれに生薬を加減する方法をとります。中医学では生薬をそれぞれの作用によって新たに組み合わせていく方法もとります。日本の薬事法では、薬局では決まった処方内容しか作ってはいけないということになっています。

お客様はどこかで漢方を勉強されたようで、決まった処方をベースに、季節の変化や体調の変化に基づき生薬の量を増減されているとのこと。それで調子よくなるようです。ここまで詳しい方は少ないし、また話していても面白いです。

漢方薬は、添付文書やパッケージにかかれた効能・効果・病名以外の目的に使うことは<日常的なこと>なのですが、お客様によってはそのような使い方をすると、「ほんと?大丈夫?」と言われ、不信感を招くこともあります。病名で薬を決めるのでなく、症状と体質で決まるという事を説明しても、信じてもらうことは至難の技です。

そんな方が来られた後に前述のように漢方を活用している方が来られたので、ほっとしてうれしくなりました。

中国製ダイエット商品

以前にも警告をしていましたが・・・

中国製のダイエット漢方薬(漢方ではないのですが)を服用されている時期に妊娠した女性が、心配なのでと相談に来られました。

聞くところによると、整体をやっている中国人から買って飲んでいたとのこと。カプセルを飲むと心拍が上りドキドキし、身体は暑くなり、口が渇き、食欲も少なくなり、ダイエット効果はあったとか。

その間に予定しない妊娠がわかり、すぐやめたそうですが、それが胎児にどのような影響を与えるかは医師でも予測はできません。

中の成分は従来からよく使われて問題になっている<脱N-ジメチルシブトラミン>や<シブトラミン>の類似物質と思われます。

その方の話では、値段は安く、効果があると勧められ、安易に使っていたという事ですが、これらこそ徹底して取り締まり、事故を未然に防ぐことが行政に求められています。今春に薬事法改正が予定されていますが、国内の販売規制だけでなく、薬局や薬店以外で販売されている危険な医薬品流通をもっと取り締まるべきと考えます。

以下も参考にご覧ください。

天天素の事故  https://www.kanpou.info/blog/ichizen/2005/05/post-5.html

中国製の精力剤  https://www.kanpou.info/blog/ichizen/2005/11/post-148.html

皮膚病の日

今日は不思議なくらい、皮ふトラブルの方が多くみえました。

以前からよくあることですが、1日のうちに同じような疾患で相談に来られる方が集中するのです。そのため、いろいろ考えることなく、スムースに対処方法や注意事項が頭に浮かんできます。

26歳女性Tさん、まぶたの付近に乾癬のような、乾燥し、痒みのある皮ふトラブルがあり、酷くなってきたので相談にこられました。舌を見ると色は淡く貧血の様で、聞くと立ちくらみで突然に倒れることがあるとの事。肌は乾燥し、風呂上りは全身に痒みがある。胃腸が悪いと頭痛がするなど、様々なことが聞かれました。

まずはアトピーを治すより、身体を整えることが先決です。そこでまずは血液を補う<漢方薬F>を体質改善薬として使っていただきました。また、生理前のトラブルや、皮ふ状態の変化から、ストレスが大いに影響しているため<漢方薬S>と、外用には赤みと痒みを軽減し、保湿する漢方クリームS>を併用しました。

いわゆる皮膚病によく使われる漢方薬は使わず、本治からスタートする方法もまれにあります。全身の改善が部分の改善につながるのです。

慢性病による寝汗

大病の後や慢性病の時に生じる寝汗は盗汗ともいいます。

極度に体力を消耗し、痩せてきて、体液が減少し、体内の熱を冷ませないために汗が出る症状で、汗によって再び体液が失われ、体力低下を招くという悪循環におちいります。また微熱が続くのも特徴です。

漢方では、体液が減少している意味の<陰虚>とか、体力・氣力が低下している意味の<気虚>などと表現します。

73歳の男性Sさん、ガンで抗がん剤治療を受け、体調も悪く入院されていました。入院中から寝汗が出始め、医師に相談されたのですが、特に異常はなくガンによるものだから仕方ないとのこと。しかし微熱は続き、身体はだるく、痩せてきて、貧血傾向もあるので、ご家族の方が相談に来られました。

これは明らかに<気陰両虚>の症状ですので、体力を付ける牛黄製剤と、補気・補陰の<麦味参>を合わせて使っていただきました。以前にも同様の相談があり、1週間ですっかり良くなったという経験がありますので、前回と同じ処方を使いました。

西洋医学では寝汗は病気にはならないようですが、漢方では昔から対応する処方があるのです。

咳の生薬と漢方

お正月明けは咳の相談が増えてきました。少しこじれているようで、なかなか抜けない方や、悪化して痰がひどくなってきた方など様々です。

台湾から来られている留学生の女性、3週間ほど咳が続いてひどくなってきたので漢方を欲しいと来店。台湾ではこんなとき杏仁のおかゆと枇杷膏を使うといわれましたが、杏仁が含まれる漢方薬のほうが早く改善するので、
<麻杏甘石湯>を1週間使っていただくことにしました。

<杏仁>はアンズの種のことで、止咳作用があり、胸中の痰をとりますので咳には良く用います。使い方は煎じても、おかゆにしてもいいのですが、有毒ですので多くは使いません。

また、枇杷の葉も咳や痰をとる作用があり、台湾ではエキスが商品化されていますが、日本では煎じて使います。

台湾や中国では、日常からこれらの生薬が気軽に使われ、悪くならないうちに自宅で対処さているのですが、日本では民間薬・生薬の活用頻度が少なくなってきています。本来は病気が悪化しないように、早く対処することが最も良い治療法なのです。